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HOME 温プロライブラリ Vol.4 呼吸器疾患と温泉療法
温泉療法教室 心身に作用する温泉療法  今回取材をお願いしました、谷崎勝朗先生のご専門は呼吸器疾患です。先生のいらっしゃる岡山大学医学部・歯学部附属病院三朝医療センターは国内でも珍しく、呼吸器疾患に対する温泉療法を採用されている病院です。そこで今回は、とくに呼吸器疾患と温泉療法の関係について詳しくお話を伺いました。
今回お話しをうかがったのは・・・
 
阿岸 祐幸(あぎしゆうこう)先生 北海道大学医学部
 
センター長 谷崎 勝朗(たにざきよしろう)先生

岡山大学 医学部付属病院 三朝医療センターセンター長
日本温泉気候物理医学会認定医 医学博士
 
温泉地の気候や自然環境を利用
 これまで温泉療法というのは「補助的な役割」というとらえ方が一般的でした。たとえば肩の痛い人がいます。その人に病院では痛み止めや湿布を処方したり、温めることを勧めます。通常はそれで痛みも消え、症状がよくなります。それと比較して「温泉に入ったらもう少しは早く治る」こんな考えが主流でした。そうでなければ、わざわざ温泉まで来る必要はありません。
私の観点は、そうではなく、これから温泉医学が伸びていくためには「温泉でなければ治らない病気というものを、まず選定しなければならない」と考えたのです。それが「温泉医学の絶対的適用」と「温泉医学の比較的適用」の違いです。
たとえば東京都内の病院でも治療できるような病気を、なぜ鳥取の三朝まで行って治さなければならないか?その根拠が必要です。こう考えたとき、温泉医学の絶対的適用となる病気として、肺気腫や難治性の喘息などの呼吸器疾患であったわけです。
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三朝医療センター
心身の機能に揺さぶりをかける
 たとえばステロイド剤を使って治療を続ける喘息などは、次第に強い薬から離脱できなくなり、薬の副作用も出現してきます。結局、薬の限界というものがでてくるわけです。そういう人に温泉を使った治療を勧めています。
日本は高齢化社会が進み、肺気腫の患者さんが増えています。肺気腫の人のCT画像を見るとわかりますが、呼吸ができる肺の容積が少なく、わずかに残った肺の組織で呼吸しるような状態です。肺気腫は手術で部分的に肺を切除し、残った肺が膨らみやすくすることもできるのですが、2〜3年すると元に戻ってしまうのです。癌のように悪いところを切除してしまえばよいというわけにはいかないのが、肺気腫の厄介なところです。
そのような患者さんに、ここ三朝医療センターでは、できるだけQOL(クオリティオブライフ・生活の質)の高い生活を送ってもらうことを目的とした治療を行っています。
もちろん、そのためには患者教育も必須であり、タバコを吸っている人は50代になったら人間ドックで検査を受けるべきです。残念なことに、当院に治療にくる人の中には、肺の破壊率が6割を超えているような人も少なくないのですが、せめて反対の割合、すなわち6割ぐらいは正常肺組織が残っているころから始めたら温泉治療の効果がもっと期待できるのです。
7日周期でバランスが変化する
 前に述べましたように、呼吸器疾患の中でも、特に肺気腫や慢性気管支炎などのCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や重症喘息などに対して、なぜ温泉療法が適しているのかご説明します。
まず、温泉入浴や温泉プールに入り水中で呼吸することで、痰が切れやすくなり、その結果、気道がきれいになり、気道の粘膜も強くなります。もちろん風邪も引きにくくなります。
この三朝温泉は放射能泉(ラドン泉)です。放射能という言葉に一般の方はびっくりされるかもしれません。しかし、ごく微量の放射能はむしろ良い影響があると言われています。通常、放射能泉と呼ばれるものにはラジウム、ラドン、トロンの3種類がありますが、日本で最も一般的なのはラドン泉です。地下何千メートルにウラン鉱脈があってこれが核分裂を起こすとラジウムになり、ラジウムが核分裂を起こすとラドンになる。温泉水内はラジウムとラドンが均衡状態になっているのが普通なのですが、三朝温泉はラジウムの含有量が大変少ないのが特徴です。ほとんどラドンしかありません。
ラドンというのは半減期が早いのです。肺まで入って数時間で消えてしまいます。ラドンが肺まで入り、さらに血液までまわり、体内を循環し、体を活性化させるわけです。またラドンの含まれた蒸気の中に入りますと、SOD活性が高まることがわかりました。SODとは抗酸化酵素のことですが、このSOD活性が高い動物ほど長生きすると最近とても話題になっています。人間の体も酸化して錆びるから老化するので、これを防止する酵素です。

7日周期でバランスが変化する
 当院に入院している患者さんの治療メニューをご紹介しましょう。食事の前後だけ安静時間がありますが、あとはリハビリや温泉プールに入ったり、散歩したりしています。
筋肉というのはすぐ衰えてしまうので、出来るだけ動くことが大切です。熱があるなど安静にしている意味があるときは別として、本来は病人といっても動けるはずなのです。
当院は、裏山に散歩道が用意してあって、登坂訓練もしています。運動したければどうぞ、散歩したければしてください、という環境です。森林浴というか自然の環境、総合的な力で病気がよくなっていくのでしょう。
また、当院は、患者さん同士のコミュニケーションがいいのですが、それは同部屋だけでなくて、一日中開放されている温泉やプールで一緒になるからなのですね。患者さん同士が情報交換しているのもこの病院の特徴です。
そのような背景もあるのか、昔は温泉療法でないと治らない人ばかりが来院していましたが、最近はずいぶん割合が減り、そうした人は全体の3割程度です。あとの7割はなぜ温泉療法を選んだかと問えば「薬を沢山飲みたくないから」だという人です。患者さんも勉強されてきて「薬を飲むだけでなく、自分の体の力をつけることで何とかならないのか」という考えの人が増えてきたのです。ですから、薬でも治る段階の人が入院してくるようになりました。健康志向というのか、温泉の利用の仕方が変わってきているようです。
ただ、温泉療法の絶対的適用は必要であり、逆にCOPDの中の肺気腫の患者の割合は増えています。
こうした状況を見てみると、従来の温泉療法とともに、温泉療法が適した病気の患者さん達がこれからの温泉療法を支えていると言うこともできるでしょう。
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