JR松本駅から、2時間ほどバスに揺られ終点で降りると、眼前には北アルプスの山々が迫り、白く波立つ蒲田川の清流とのコントラストが美しい。公共の湯や温泉宿は、蒲田川沿いの広い範囲に点在しているので、温泉街というよりは、北アルプスへの登山口といった風情で、アルペンムードが漂う。大きなリュックを背負った登山者に交っていると、まるで行き先を間違えてしまったように感じる。
バス停からすぐの蒲田川にかかるめぐみ橋のたもとに、井上靖の小説「氷壁」にも登場する温泉宿中崎山荘がある。実は、この地を「新穂高温泉」と名付けたのは、中崎山荘の先代だという。中崎山荘の先代が林業を営んだ後、昭和28年に登山者のために山小屋を立てた。その際に、名も無き温泉地に、穂高連峰にある新しき場所との意味で「新穂高温泉」としたのだそうだ。
中崎山荘の脇には、無料の持ち帰り湯・足湯の「中崎の湯」が併設されている。靴を脱ぎ、移動で疲れた足を浸してみたが、なるほど、指先の関節がゆっくりと開いてゆくようで、何とも言いがたい気持ちの良さである。湯の温度が高く、最初は熱く感じたが、しばらくすると、足先から段々と熱が伝わってきて、身体中がじんわりと温まってくる。足湯を愉しみながら、持ち帰り用の中崎の湯を眺めていると、引きもきらずに登山者や地元の人々が、ペットボトルを持って温泉を汲みに来る。試しに一口飲んでみたが、口当たりはまろやかである。北アルプスの湧き水も引かれており、こちらはまさに清流が身体を走りぬけるような冷たさだった。 |

「新穂高温泉」のバス停前にある食堂。
1階には観光案内所と登山者センターがある。 |

めぐみ橋から蒲田川の眺め。
清流の先には新穂高連峰の
緑が広がり、すがすがしい。 |
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