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HOME 温泉メカニズム体験記 セレクト1 源泉の愉しみ 青森県 十和田八甲田の温泉
温泉メカニズム体験記「青森県 十和田八甲田の温泉」
 本州北端にある十和田八幡平(はちまんたい)国立公園では、かつての火山活動によって、湖や渓流、高原など豊かな自然の姿を見ることができる。そして、十和田湖から奥入瀬川(おいらせがわ)を経て八甲田山の裾野にかけての一帯には、北東北を代表する名湯がずらりと並ぶ。その中で奥入瀬渓流と蔦の温泉を紹介する。
※写真:7月中旬、八甲田山へ連なる菅野高原付近からの眺め。
セレクト1 源泉の愉しみ セレクト2 ふるさとのいで湯

火山活動によって始まった十和田湖の歴史
 十和田八幡平国立公園は、十和田湖を中心にした十和田地区と、山や高原を中心にした八幡平地区から成り立っていて、総面積は約883平方キロメートル。火山地帯特有の地形によって、大自然のさまざまな姿を見せている。

標高の高い場所ではこの季節でも
夏草の中に残雪が認められる。

これは残雪ではなく火山性の物質が
地表に露出している様子。
 十和田湖の歴史は、今から20〜30万年前の火山活動から始まる。噴火によって富士山型の成層火山がまず出現した。この火山は噴火を繰り返すうちに大きく陥没して、長い年月のうちにそこに水がたまり、その後も新しい火山ができて陥没するが、やがて火山活動は休止して周囲が緑に覆われるようになった。水がたまったところが湖となり、ここから奥入瀬渓流が流れ出すことになる。渓流は東へ流れて太平洋に注ぎ、深い森林があたり一帯に広がるようになった。

十和田湖から流れ出ている奥入瀬の渓流。
この日はやや増水していた。
 面積約60平方キロメートルの十和田湖は、水深が約327メートルで、田沢湖、支笏湖(しこつこ)に次ぐ日本で3番目に深い湖だ。湖面の標高は401メートルと高い場所にあり、流れ出る奥入瀬川の途中には急な滝があるので、魚が登って来ることできず元々は魚がいなかった。今は、明治の初め頃にヒメマスが移入されて養殖が行われているが、周囲から隔絶されたような、神秘的な美しさのある湖だ。
 十和田湖からの水の出口は、東側の「子の口(ねのくち)」という地点で、ここから奥入瀬川の渓流が流れ出ている。子の口から支流の蔦川と合流するあたりまでの約14キロメートルが、渓流としての美しい姿でよく知られている。そしてその合流点にあたるのが焼山(やけやま)と呼ばれる場所だ。
奥入瀬の自然と温泉に全身が包まれる
 焼山という名前からは、いかにも火山地帯を連想するが、一帯は奥入瀬渓流のほとりで、ブナなどの原生林によって北東北らしい深い森が形成されている。川には大きなイワナが姿を見せ、カワセミやセキレイなど野鳥の姿も見られる。
 この森の中に奥入瀬渓流グランドホテル、奥入瀬渓流第2グランドホテル、奥入瀬渓流温泉ホテルといったいくつかの近代的なホテルがある。これらのホテルには、近くの名湯、猿倉温泉から湯が引かれている。

奥入瀬渓流グランドホテルの瀟洒な正面玄関。
樹木と霧に囲まれている。
 まず、奥入瀬渓流と蔦川がちょうど合流するほとりにある奥入瀬渓流温泉ホテルの湯に入ってみた。こぢんまりとした「桂の湯」とその露天風呂だ。泉質は単純温泉(低張性中性高温泉)だが、ほんのりと硫黄臭が感じられて温泉気分を盛り上げてくれる。やや濁りがあり温泉成分の「湯の花」も見える。味は感じない。効能としては神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性消化器病、冷え性、疲労回復などとなっている。
 入ってすぐは、ちょっと熱い感じもするが、ほんの数分でそれがほど良い温かさに変わって、じんわりとしみ込んでくるような感じになる。温まったところで、露天風呂へ入ってみると、7月中旬でも渓流を渡って来る風はひんやりとして実に気持ちが良い。

奥入瀬渓流温泉ホテルの桂の湯。
初めはやや熱く、
やがてじんわりと温まる。

桂の湯の露天風呂。
奥入瀬渓流を渡る風が
夏でも涼しく気持ち良い。
 この奥入瀬渓流温泉ホテルの前庭には、誰でも自由に利用できる足湯があり、湯の上にテーブルがしつらえてある。また、ここには名水として知られる南八甲田湧水の自噴泉があり、時折この水をくみに来る人の姿が見られる。

奥入瀬渓流温泉ホテルの前庭にある足湯。
湯の上にテーブルがしつらえてある。

こちらも奥入瀬渓流温泉ホテルの
前庭にある南八甲田湧水。
すばらしく美味。
 メインの奥入瀬渓流グランドホテルには展望大浴場と露天風呂などが、奥入瀬渓流第二グランドホテルには温泉展望大岩風呂がある。また、少し離れた場所に奥入瀬渓流グランドホテルの外湯として名瀑露天風呂「八重九重の湯」もあり、喧噪を離れた森の中で、じっくりと緑と湯に包まれることができる。

奥入瀬渓流第二グランドホテルの温泉展望大岩風呂。
真正面に濃い緑が映える。
蔦温泉をはじめ名湯が連なる

十和田八幡平国立公園の中の一軒宿、蔦温泉。
霧に包まれている。
 蔦川を少しさかのぼると、やはり静かな森に囲まれて一軒宿の蔦温泉がある。こちらは建物全体が昔ながらの雰囲気で、玄関も帳場も懐かしさを感じる。建物は古いが、よく磨き込まれている内部は美しい艶を出している。霧と緑に包まれて建っている様子は何ともいえない風情だ。ここにも玄関脇にうまい湧水が出ていた。良い温泉のある場所には、おいしい湧水がある場合が多いのだろうか。
 蔦温泉の特長は、3つある浴場のどれもが、源泉の上に浴槽が作ってあることだ。その一つ「久安 (きゅうあん)の湯」は、床を掘り下げたように浴槽があり、無色透明の湯の底の方を見ると、底板の間から時折ゆっくりと気泡が上がって来る。湯は浴槽の縁からあふれて流れ出ていて、浴槽の板の下に確かに源泉のあることが分かる。
 湯は刺激がなく肌にやさしい感じがする。泉質は単純泉だ。効能としては外傷、各種の慢性病、諸病の回復期などに最適となっている。
 蔦温泉から青森市の方へ、高原の上や森の中を走る道路に沿って進むと、他にも谷地温泉、猿倉温泉、酸ケ湯温泉、城ケ倉温泉など、それぞれ特長のある北東北の名湯が次々と現れる。何日もかけて、これらの温泉に順番に入ることができたなら、それは本当にぜいたくな旅となるだろう。

蔦温泉の建物は懐かしい風情がある。
これは玄関と帳場付近の様子。

蔦温泉の「久安の湯」。
源泉の上にそのまま浴槽が据えられている。
COLUMN
 奥入瀬渓流温泉ホテルの前庭に自噴する南八甲田湧水は、すばらしいうまさだった。本当においしい水は、無味ではなく、もちろん嫌なにおいがあるわけではない。まさに「うまい味」があることが、はっきりと分かった。えてして水が良いとは言えない都会にいると、こうした名水がいつでも飲めるということはうらやましい限りだ。都会に戻ってしばらく暮らすと、いつかこのうまい水の味もまた、忘れてしまうのだろうか。
(取材:岩間靖典)
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