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HOME 温泉メカニズム体験記 第5回 大分県 長湯温泉
 このホームページの「きき湯誕生プロジェクト」第1回に登場するのが長湯温泉。この温泉のある直入町は人口3千人ほどでありながら、炭酸泉のつながりからドイツと盛んな交流を行なっている。文化として捉えられている温泉療養を見聞した。
※写真:川の中の露天風呂「ガニ湯」
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ラムネ温泉:設備も新しく清潔で
明るい雰囲気の私営の公共浴場

長生(ちょうせい)湯:
町営の公共浴場の1つ。
やはり新しい設備で気持ちいい
 昭和の初め頃、九州帝国大学教授の松尾武幸博士は、長湯温泉を訪れて炭酸泉のすばらしさを賞賛した。松尾博士は、ヨーロッパでの温泉視察をしてドイツのカルルスバードなどの温泉文化を知り、長湯温泉でそれに近いものを感じたのである。
 長湯温泉のある直入町のメインストリートは、人口3千人の温泉郷らしく小さな通りなのだが、役場で碧眼の白人女性が業務をしていたり、ドイツワインの酒店があったりしてやはり雰囲気が違う。その通りの外れの方には中世ヨーロッパ建築風に造られた飲泉場もある。町はこのメインの通りと芹川という小さな川に沿って発展している。川に沿って歩くとさまざまな温泉施設があって、心がはやる。
 木造の簡素なつくりの「ラムネ温泉」。川の中にある周囲から丸見えの露天風呂「ガニ湯」。川が森に差し掛かるあたりには「天満神社」と飲泉所がある。ここの橋のたもとには町営「天満湯」。そこから橋を渡るとやはり町営の「長生湯」(ちょうせいゆ)がある。そして緑の森を対岸に見た川辺に、この町の象徴である「直入町温泉文化館 御前湯」のすばらしい建物がある。こちらも町営の公衆浴場なのだが、「文化館」という名前が冠せられている理由は後で分かることになる。
 長湯温泉の泉質は日本一の炭酸泉とされて二酸化炭素を非常に大量に含んでいる。長湯ではその炭酸泉にも2種類あり、1つは湯温が40℃未満の純炭酸泉と、もう1つは湯温が40℃以上の炭酸水素塩泉(重炭酸土類泉)だ。現在ではほとんどが重炭酸土類泉を源泉にしているそうだ。カルシウムやマグネシウムといった土類金属と鉄分も含有していて、アレルギー性疾患、慢性皮膚病などに効用があるが、飲用すると慢性の消化器疾患などにも効果がある。
 ヨーロッパでは、温泉を飲用することは古くから盛んに行なわれていて、この「温泉を飲む文化」を長湯は盛んに取り入れている。そのためこの小さな温泉郷には飲泉所が何カ所もある。飲泉は、温泉水が湧き出している場所から飲むもので、持ち帰るなどすると効果が減ってしまうそうだ。
 先にも記したヨーロッパ風の飲泉場の他にも、町営や民営の飲泉所がある。天満神社の中にも凝った造りの飲泉所があるのには驚いた。御前湯の玄関の飲泉所には木製のオリジナルカップが置いてあった。
 さて飲んでみると、これは非常に濃い味である。1回に飲む量は100〜200ミリリットルで少しずつ飲むのだが、たくさん飲めないほどの味である。鉄を飲みくだすような強烈な味がして「良薬は口に苦し」の通りである。

町営の飲泉場:
メインストリート沿いにある
中世のヨーロッパ風のつくりが特長的
(写真提供:直入町)

御前湯:
日本風建築とドイツ風建築を
合わせたような凝った造りだ
(写真提供:直入町)

 長湯温泉では、古くからの日本の温泉文化である湯治、昭和初期に温泉療法に真剣に取り組んできた先人たちの努力、そしてドイツとの温泉文化交流という要素を、取り混ぜて取り入れてあちらこちらに見えかくれしている。その象徴といえるのが、「御前湯」だろう。
 建物は日本建築と西洋建築を融合させたように見える。温泉療養のための施設が充実しているが、日本とドイツの温泉文化に関する資料も豊富に展示されている。中でもドイツのバートナウハイム市で100年前から使われていたという木製の浴槽はすばらしい。
 浴室は家族湯から露天風呂、大浴場までさまざまなタイプがある。特に家族湯は和風の浴室も洋風の浴室も非常に凝った造りである。最近は家族で仲良く入りたいという需要が増えていることをふまえてのことだそうだ。
 大浴場に入ってみる。炭酸泉というのは普通は湯温が低く、長湯は例外的に温泉に適した温度だというがやはりそれほど熱くはない。炭酸ガスは非常な量だが、その効果が本当に分かったのは、上がってしばらくしてからのことだ。20分たっても30分たっても体のほかほか感が消えないのである。体内に吸収された炭酸ガスが血管を拡張し、血流を円滑にすることによるというが、本当に「温泉は入ってみなければ分からない」ものだ。入って上がってそれがはっきりと認識できた。

川に面した半露天風呂。
対岸の川に面した木々の気を
そのまま感じる

こちらも家族風呂の1つ。
まるでしゃれたリビングに
浴槽があるかのようだ
COLUMN
 長湯温泉のある直入町は、大分県の中でも中央部の山間にあり鉄道の駅からも離れているため、交通の便は決して良い方ではない。しかし、この九州の内陸部の小さな町が温泉に向き合っている姿勢には敬服した。ドイツとの交流は本当に盛んで、ドイツには直入町のためだけのワインのブドウ畑まで作られているそうだ。このドイツワインはここでしか入手できない。そしてもう1つ敬服したのは、このドイツワインの味であった。
(取材:岩間靖典)
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