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HOME 温泉メカニズム体験記 第10回 愛媛県 道後温泉
 四国・愛媛県の県庁所在地である松山市から、路面電車に揺られて約20分、道後温泉駅に到着する。その瞬間から訪れた人が非日常を実感できるのは、道後の街の全体から湯気のように漂う伝統と文化の香りを感じるからだ。
※写真:松山城の櫓。松山市の中心にある松山城は山頂に天守閣を置く平山城。
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明治の雰囲気を
たっぷりと感じさせる道後温泉駅。

道後の街の中には
無料で利用できる足湯がいくつもある。
ここは市営の足湯「放生園」。
  古くからある温泉と人間とのかかわりは、文献が残っていなければ、その歴史を知ることは難しい。しかし、ここ道後温泉は「万葉集」にその名前を見ることができるというから奈良時代には人々に知られていたことが分かる。

上代の帝后らも多く来訪していたといわれ「三千年以上の歴史を持つ」「日本一古い温泉」という売り文句もそれほどおおげさには感じない。

そしてもう一つ有名なのは、夏目漱石の「坊っちゃん」に登場するということ。漱石自身が、松山中学の英語教師として1895(明治28)年に赴任していたことはよく知られている。漱石だけでなく、正岡子規、高浜虚子など多くの文人墨客のゆかりの地である。

松山市内から道後温泉に入るなら、ぜひ路面電車に乗りたい。型式の古い車両は木の床で、ゴトゴトと心地よく揺れる。古いもの、歴史あるものやその雰囲気が大切にされているのが道後の街だ。

路面電車が到着する小さな道後温泉駅は、1911(明治44)年に建てられたものをそのままの面影で再建している。駅舎のはす向かいの「放生園(ほうじょうえん)」には石造りの足湯があり、坂の上には小さな温泉街が望める。

壮麗な木造建築の道後温泉本館。
てっぺんに見えるのは夜には
赤く灯がともる「振鷺閣(しんろかく)」。

情緒ある道後温泉本館

霊の湯2階席。
古さがそのまま残り
温かさとなって客を癒してくれる


いで湯の街の神社はその名も「湯神社」。。
  道後温泉の象徴的な存在は、公衆浴場の道後温泉本館だ。建物は国の重要文化財にも指定されているもので、1894(明治27)年に建造された木造三層楼。

その荘重な姿は、これぞ昔ながらの温泉建造物、「湯屋」の建物という存在感を誇っている。

道後温泉本館は、宿泊施設は併設されておらず、松山市が管理する純然たる公衆浴場。

その木造の建物の中には全部で5つの浴室があり、この浴室と、大広間や個室など休憩室の組み合わせで4つの入浴コースがある。

広々とした庶民感覚の「神(かみ)の湯」は、男湯が2つ、女湯が1つで、入湯のみなら、料金は大人300円。本当に銭湯の感覚で地元の人が入っている。

2階席も利用でき、55畳の大広間で浴衣に着替えて、風呂上がりにはお茶とお菓子がでる。

その場合は、料金は入湯料込みで620円。

こじんまりと高級感のある霊(たま)の湯は、男女各1つの浴室。2階席は少人数の広間で980円。3階には個室がある(1,240円)。

また、日本で唯一という皇族専用浴室の「又新殿(ゆうしんでん)」があり観覧もできる。

霊の湯2階席を利用してみた。

入口の「札場」で券を買い、細い階段を上がって迷路のような通路を抜けて2階席へ。内部も古い木の香りが漂い、なんとも懐かしい雰囲気。

さて、座敷で浴衣に着替えて、別の階段で階下へ。

浴室は意外にモダンな造りになっていてとても清潔な感じがする。浴槽も壁も石造りで、浴室はそれほど広くはないが、人も少なくのんびりとできる。アルカリ性単純温泉なので、無色透明で匂いもなく入りやすい。ただ、湯はちょっと熱めの43度ほどなので初めは熱く感じる。入ってしまうと温かさがじわじわと沁み入ってきて、自分の鈍っていた代謝が活発になってくるのが分かるかのようだ。


寛永年間創業の歴史を誇る
老舗旅館の「ふなや」

ふなやの檜風呂とふなやの石風呂
(写真提供:ふなや)
  道後温泉の源泉は1940(昭和15)年までは1カ所だったのが、その後ボーリングに成功して、充分な湯量が確保され、旅館が多く建てられた。
その中で、江戸時代の寛永年間に開業して370年の伝統を誇るのが「ふなや」である。
建物は1993(平成5)年に大改装をしており、真新しい建物が趣のある庭を囲んでいる。夏目漱石が松山赴任時に宿泊した折り「はじめての鮒屋泊りをしぐれけり」の句を遺している。皇族の宿泊も多い由緒ある宿だ。
今は「あらためましてふなやです」の言葉を掲げて、原点回帰と新しいサービスの融合を目指しているという。浴室は、檜風呂、石風呂がそれぞれ時間等によって男女交替で利用できる。
露天風呂も併設されている。どちらの浴室も贅沢で落ち着いた造りになっている。
源泉掛け流しで、湯温は熱交換方式を採用しているため、いっさいの水は加えておらず、もちろん再利用もしていないというから安心できる。
 明治期の街や古代の湯の様子を想像しながら、路面電車で道後を後にする時、温泉情緒とともに古い文化の香りをたっぷりと吸い込んだ体の心地よさを感じた。
COLUMN
 道後温泉本館の「霊の湯」から上がって座敷へ戻ると、お茶とお菓子が出される。浴衣のまま汗が引くのを待ちながら、部屋を見回すと、木造建築が感じさせてくれる郷愁の強さにあらためて驚いた。ゆっくりとお茶をすする。日常とはまったく別の世界。「温泉地へ来たのだ」としみじみ感じるこの瞬間が、温泉が体と心を癒す効果の表れだと確信する。
(取材:岩間靖典)
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