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HOME 温泉メカニズム体験記 第15回 静岡県 伊豆長岡温泉
 日本の一大温泉地帯といえる伊豆。熱海、伊東、熱川、下田、修善寺等々、熱い湯がそこここから湧き出ている半島の付け根近くに古い歴史をもつ温泉がある。伊豆長岡温泉の古奈の湯の風雅を味わった。
※写真:雨に濡れて風情のある古奈温泉街のあやめ小路。
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東海道線の三島駅から修善寺行きの
伊豆箱根鉄道に乗り換えて、
伊豆長岡駅で降りる。

もうもうと湯気が吹き上がる
温泉まんじゅうの店。
温泉街には欠かせない風景。
  東海道線の三島駅と修善寺温泉を結ぶ伊豆箱根鉄道という私鉄電車に乗って20分、伊豆長岡駅に降り立つ。何となく控えめで奥ゆかしい雰囲気を感じる。駅から狩野川を渡って、歴史ある伊豆長岡温泉の街に入る。この日は小雨が街全体を濡らしていて、これまた、風情を感じさせた。街の入口にあるよく整備された公園の一角の東屋には、「姫の足湯」と名付けられた明るくきれいな足湯があり、温泉がごく身近にある街であることを実感する。

伊豆長岡温泉街の入口にある足湯
「姫のあし湯」で、まず旅の疲れをいやす。

足湯と同じ場所にある飲泉所も
新しくきれいで気持ち良い。
  伊豆長岡温泉は、四方を丘陵に取り囲まれた温泉街で、街の真ん中にも小さな丘陵があり、その丘陵を境にして、2つの温泉街に分かれている。駅から向かって丘陵の奥が、明治の終わり頃に開かれた温泉で長岡地区。手前は、実に800年の昔、鎌倉時代に開かれたという古奈地区である。古奈温泉は鎌倉幕府の初代将軍、源頼朝が入浴したと伝えられる温泉で、伊豆山温泉、修善寺温泉とともに伊豆三古湯の一つとされているそうだ。

石垣にかやぶきの屋根の門が
おもむきを感じさせる古奈別荘の入口。

ロビーには日本旅館の良さを
感じさせる調度が並ぶ。
  この古奈温泉にある純和風の旅館、古奈別荘の湯に入ってみる。泉質は弱アルカリ性の反応を示す単純温泉。脱衣所に掲げられている成分表の適応症を見ると、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え症、病後の回復期、疲労回復、健康増進と、14もの効用が記されている。また、弱アルカリ性の単純温泉は肌をきれいにする「美人の湯」としても知られている。
 単純温泉は、無色透明で刺激が弱いために、誰にでも入りやすく適用範囲が広いという特長がある。病後の回復期に良いというのも、やさしい入り心地ゆえなのだろう。高齢者にも最適で、ゆったりとやわらかい湯はとても喜ばれるそうだ。
 湯は確かに刺激がなく、さらさらとして入りやすい。ゆっくりと浸かることが出来そうだ。

小さな丘陵のふもとに
木々に抱かれるように建つ湯屋。

男性大浴場の露天風呂「冨貴の湯」から
かやぶきの離れを望む。

日本庭園の泉水にそのまま温泉が
湧き出ているかのように見える。
  古奈別荘の露天風呂は、竹垣に囲まれ、大小の庭石が配され、季節の花を咲かせる庭木がながめられる日本庭園のような造りになっている。その庭園の真ん中に大きくとってある、風情のある池かと見まがうその泉水が、露天の湯なのである。竹垣の向こうには、かやぶき屋根の建物が見える。
 こうした日本的な美しさ、「和」の風雅が心を鎮める効果は大きなものがあると思う。温泉に入ることは、温泉そのものの効用の他に、その地へ来て、その場所の自然や風物に心がいやされる「転地効果」と呼ばれる効果がある。和風建築や日本庭園には、そうした転地効果を助ける大きな働きがあるのではないだろうか。日本文化の特徴のひとつに、心静かにゆったりとすることを尊ぶことがある。色合いや造形が、派手でなく奇異でなく、心を鎮めよう鎮めようとしているようだ。
  源頼朝も、往古にこの地で、荒ぶる気持ちと、戦いの疲れをいやしたのではないだろうか。

婦人大浴場の露天風呂「千歳の湯」。
COLUMN
 本当の日本庭園であれば、池の水につかるのは、その庭園に長く住み続ける「ぬし」の河童ぐらいであろうが、ここの泉水はこんこんと湧き出す温泉なので、人間の私もゆっくりと体を沈める。湯から首だけ出してきょろきょろと周りを見る。たまたま他にお客さんがいなければ、まさに自分がこの庭園のぬしになったようだ。泉水の高さから庭園を眺めたら、何か自分がその庭園、ひいては地面や自然と一体になったような不思議な感覚を覚えた。
(取材:岩間靖典)
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