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| 仙台から車で30分ほど奥羽山脈方向へ入ると、名取川の峡谷に沿って近代的な旅館の建物が並ぶ静かな温泉街、秋保温泉がある。有馬温泉、道後温泉とならぶ日本三古湯の一つ、南東北の名湯を体験した。 |
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※写真:仙台駅以外のもうひとつの玄関口は、JR仙山線の愛子駅。

名取川を中心とした温泉街は、
歴史は古いが大きく近代的な建物の旅館も多い。 |
東北地方のいわば背骨といえる奥羽山脈は、南北に400kmも延びる日本最大の山脈だ。分水嶺として雨水を日本海と太平洋に分ける。昔は西側を羽州、東側を奥州と呼んだところから、合わせて奥羽山脈というのだそうだ。この壮大な山脈は、那須火山脈に属するたくさんの火山をもっているので、北は青森県の八甲田山周辺から南は福島県の磐梯山周辺までたくさんの温泉が湧き出している。
宮城県のあたりでは、山脈は南北に山形県との県境を成しているが、その真ん中くらいに船形山、南には蔵王山という大きな火山がある。この2つの火山の中間地点あたりから、雨を集めて太平洋に運んでいる川が名取川で、秋保温泉はこの川の段丘に位置する。
秋保温泉から海までは、意外にも30kmほどしかなく、地図で見ると東北地方の中でも東西の幅が狭い地域になる。奥羽山脈の東側に湧き出す温泉としてはかなり海に近い方で、海に近いということはだいたい地形がなだらかで、つまりは交通の便が昔から良かったということになるだろう。また、山脈西側の深雪に対して東側はそれほどでもないようで、そのため、おそらく日本三古湯の一つとされる歴史を持っていると思われる。
何しろ、飛鳥時代から歴史に登場しているというのだから、伝統がある。6世紀中ごろ、欽明天皇が皮膚病を患った時、秋保温泉の湯を運ばせて入浴したところたちどころに快癒したとされる。その時に詠んだ歌から、秋保の湯は、名取の御湯とも呼ばれているそうだ。 |
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愛子駅のプラットホームの
下に流れるのは広瀬川。 |
秋保温泉は、仙台駅から車で30分ほどなので、多くはここから客が入って来るが、最近は仙山線(仙台と山形を結ぶ線)の愛子駅からも入って来るお客さんが増えているそうだ。巨大ターミナルの仙台駅と異なり、愛子駅はいかにも小さくて風情のある駅だ。愛子駅の下には広瀬川が流れていて、この上流にやはり有名な作並温泉がある。秋保温泉が面している名取川は、広瀬川に平行するように奥羽山脈から流れ出て、下流で一緒になって太平洋に注いでいる。愛子駅から秋保温泉までは車で10分ほどだ。 |
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秋保の温泉街の真ん中を流れる
名取川の奇観「磊々峡(らいらいきょう)」。 |
秋保温泉は仙台という都市の近郊にある温泉だが、歓楽街的な雰囲気はなく落ち着いている。といって、ひなびた山里の温泉という感じではなく、静かながら大きく近代的な建物の高級旅館も多い。南東北の温泉で、都市に近く、そして歴史と由緒ある古湯という条件がこの雰囲気を作り出しているのかも知れない。
温泉街の真ん中を流れる名取川は、とても深い渓谷で、その所々に特に切り立った岩が積み重なっている場所がある。街の外れにある「磊々峡(らいらいきょう)」はその一つで、まるで人知れない深山にあるような奇観を、橋の上からのぞきこむことができる。 |
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秋保温泉にある昔ながらの共同浴場、
小さく素朴で味わいのある風呂だ。 |
旅館が点在する中に、平家建ての小さな共同浴場があったので、昼下がりに入ってみた。本当に地元の人のための共同浴場のようで、昔ながらの雰囲気があり、入湯料は300円。中にはごく小さな浴槽が一つあるだけで、2、3人の地元の人だろう、ゆったりとくつろいでいた。 |
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飛鳥時代からの元湯「名取の御湯」を
守り続けているという老舗旅館「佐勘」。 |
飛鳥時代の「名取の御湯」から始まり、江戸時代には仙台藩主・伊達公にも愛されたという湯元を守り続けているとういうのが、老舗旅館の「佐勘」。館内には古い伝統を伝えるたくさんの遺物があるが、全体はとても大きな近代的建物だ。
浴場も、収容人員が多いため、大浴場が2つとそれに附属する露天風呂があり、その他に「名取の御湯」、露天風呂の「河原の湯」がある。

佐勘の内湯のひとつ「名取の御湯」の
ゆったりとした明るい浴槽。
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佐勘の2つある大浴場のひとつ。
内湯だがとても開放感がある。 |

大浴場に付属した露天風呂。
奥は石、手前は木の湯舟で
異なった感触が味わえる。 |
この中で河原の湯は、貴重な天然の源泉を掛け流している風呂だ。泉質はナトリウム・カルシウム−塩化物泉。泉温は64.5℃となっている。無色透明で、においはほとんどないが、かすかな塩味を感じる。吐出口の湯はかなり熱く、この近くは温度が高いが、同じ浴槽内でもちょっと離れると温度が低くなるのがはっきりと分かる。浴槽全体としては、ちょうど良い感じの温度だ。刺激はなく、やわらかな感じで入りやすい。
そして何より、その名の通り河原にあるため、川風を感じながらの入浴がとても気持ち良い。季節は秋の中ごろなのでちょうど良いのかも知れない。冬になればもっと寒いだろうが、それもまた、別の心地よさがあるに違いない。気がつくと、頭はひんやりとしながら、いつの間にか体はつま先まですっかり温まっていた。

地下3階に位置する廊下から、
さらに階段を下ると「河原の湯」へ至る。 |

峡谷の清流を渡る風を浴びながら入る
河原の湯の浴槽。 |

この河原の湯は、源泉掛け流し。
貴重な源泉をじっくりと楽しめる。 |

河原の湯から見た名取川。
川底がそのまま透けて見えるほどの清流だ。 |
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| 「河原の湯」の浴槽から首をちょっと伸ばせば、すぐ下に渓谷の流れが見える。切り立った崖の下を流れる小さな川だが、泡立って流れる急流ではない。川底がそのまま見えるほどの清流で、その水はまるで、おそろしく透き通った寒天が谷底にぴったりと張り付いているかのようだ。視線を上でなく下に向けて、美しい物が見えるという状況は、都会にはなかなかないものだ。こんな風景をながめて温泉につかるなら、体の中も頭の中もすっきりときれいになれることだろう。 |
| (取材:岩間靖典) |
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