
乳白色の「登別カルルス」 |
白く濁る湯、それはツムラに限らず入浴剤開発担当者にとっては夢の商品だった。
濁るという原理を考えつつ、入浴剤としてよいものを作らなければならないのは、実は至難の業だったのだ。濁らせるだけなら、油や界面活性剤を使えばよい。乳液の原理だ。
極端に言えば、絵の具だって牛乳だって白いものを入れれば瞬間的には濁るだろう。細かい空気を通して気泡を発生させても濁ったように見える。
だが、入浴剤の成分として適しており、しかも一定の時間が経っても沈殿せず、濁りを保つことができなければ、成功とはいえず、商品化はできない。「白く濁った湯は夢のまま終わるのか」そんなあきらめに似た思いを抱いたことも1度や2度ではない。

乳青色の「山代」 |
しかし成功の日は唐突にやってきた。
ある若手の研究員が「できました!」と谷野や綱川の元に飛んできたのだ。勇んでバスタブのある研究室に行ってみると、確かに浴槽の湯は白く濁っている。しかも一定時間を経ても濁り方に変化はなく、色も変わらない。「いろいろやっていたらある日突然出来た、というのが本当のところ」と谷野は笑う。そこから、成分や濁りの調整、風呂釜の検査まで含め、発売までにまるまる1年を費やした。
白く濁る入浴剤はできた。さあ、今度は白く濁る湯の温泉地の候補だ。日本の名湯シリーズの条件にあった「名湯」で、しかも白く濁る湯のイメージ。
さまざまにスクリーニングした結果、「登別カルルス」と「山代」に最終決定したのだった。
実は「登別温泉」と「カルルス温泉」は厳密にいうと若干離れた場所にある別の温泉だ。日本の名湯では、カルルス温泉(透明)の泉質を採用し、「登別温泉」の白く濁った特長をあわせてつくった。だから「登別カルルス」。
山代温泉の湯も実際は白濁していない。しかし開発担当の心の中には、北陸の短い夏の印象が強烈に残っていた。太平洋側とはまた違う深い青空。そこに浮かぶ真っ白な雲。登別カルルスの白濁が雪の白のイメージの乳白色なら、山代の白濁は深い青い空と雲の白さを反映した乳青色。同じ濁りでも、その発端となったイメージはまったく違うものだった。
この2つの「濁り湯」の登場で、「日本の名湯シリーズ」は爆発的なヒットとなった。今でも「登別カルルス」は白濁した入浴剤の代名詞のようになっているし、登別の人々との交流も続いている。 |