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植田 理彦(うえだみちひこ)
日本温泉気候物理医学会・温泉療法医会顧問、
社団法人 民間活力開発機構 温泉療法システム研究会会長、医学博士 |
| 温泉を利用して身体と心の健康を増進しようという考え方は古くからありますが、温泉療養をもっともっと科学的に考えて生活に取り入れる動きが、いま盛んに行なわれています。ここでは温泉療法の権威である植田理彦先生に「きく」温泉利用法の概要を語っていただきました。 |
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温泉が健康に役立つことは、おそらく有史以前から分かっていたことでしょう。それは長い経験から昔の人間たちが学んできたことです。
やがて、そうした経験を科学的に解明しようとする研究も行なわれるようになり、ヨーロッパでは医学の発達とともに特に盛んでした。19世紀のドイツの内科学者ベルツは、明治の初め頃に日本にやって来て、草津温泉に非常に興味を持ったといいます。
私自身は、物理療法内科を勉強した後、戦後の1950年頃から温泉療法を研究するようになりました。それにこの道を選んだきっかけとしては、もともとは私が幼少の頃からよく温泉に行っていて、私自身が温泉好きだっということもあるでしょう。
私は東京生まれの東京育ちですから田舎というものがなくて、休暇というといつも家族で伊東の温泉に行っていたんです。今はこうして温泉がブームになって、どなたでも気軽に温泉に行くようになりました。しかし、これからは利用する皆様も、温泉を科学的に考える機会が増えるといいですね。温泉に行っても、お酒を飲んでごちそうを食べるだけではもったいないと思います。温泉を利用するなら、一般の方々にもぜひ温泉についての正しい知識を持っていただきたいものです。温泉の性質や全国各地の温泉の選び方、より効果的な入浴法や、やってはいけない温泉の入り方など、温泉に入る皆さんも温泉療法のプロになった気分で探究してみてください。 |
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温泉療法の盛んなヨーロッパで、たとえばフランスのビシ−という有名な温泉は「ビシーは肝臓の湯」と呼ばれています。どの温泉が身体のどの部分の健康に良いかが分かるようになっているんですね。私は、日本でも全国それぞれの温泉の効能が、ひと目で分かるような呼び方が定着するといいと思っています。それは、一口に温泉と言っても、温泉によって独自の効能があり、入り方も異なるからです。例えば草津温泉には「湯もみ」の所作とともに「時間湯」という特殊な入浴法があります。草津温泉は湯の温度が47℃ほどもあり、酸性が強いために、かつては勝手に湯に入った人が命を落としてしまうこともあったんです。
そこで、湯もみのあと「湯長」と 呼ばれる人が号令を掛けて、入浴する人はその号令に合わせて短時間で入るわけです。そうした特殊な入り方だけでなく、どの温泉であっても共通の入り方というものもあります。食後すぐの入浴や飲酒後の入浴は避けなくてはなりません。1日に4回以上入浴したり、過度に長時間の入浴も避けましょう。十分なかけ湯や半身浴からゆっくりと湯舟につかることも大切です。
それから、普通に行なっている手ぬぐいを頭に乗せるということも実は理にかなっているんですね。単に手ぬぐいを湯舟に浸けないというマナーのためだけでなく、頭部を冷やすことで「頭寒足熱」にしているわけです。より詳しい入浴方法や温泉の科学については、「効果的な入浴法と温泉療法」や「温泉の効くメカニズムを科学する」を参照してください。 |
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最近は、心の健康に関しても日常的に話題にのぼるようになりました。私のところにも、心の悩みを抱えている人が相談に来ることがあります。以前にもOLの方が「うつ状態を癒すために温泉に1カ月ほど療養したい」と相談に来ました。温泉が心の健康に効果があることを知っていらしたのですね。
しかし、より効果的で正しい温泉の利用法となると、まだなかなか浸透していないようです。泉質を見れば主な効能はだいたい分かりますが、きちっと療養しようと考えた場合、どのくらいの期間、どのように温泉を利用したら良いかということは、専門家でなくては分かりません。温泉療法医を中心とした温泉療養アドバイザーがいる温泉なら安心して利用できます。
それから、もうひとつ大切なのは温泉の宿泊施設です。温泉でしっかりと療養しようと思っても、一般の温泉宿では女性の一人客などは、宿泊が難しいこともあるでしょう。しかし、温泉療法を心得ている宿泊施設ならば
心の悩みを抱えた女性が一人で宿泊ができるところもあります。温泉に浸かるだけではなく、浴衣を着て、その土地ならではの料理を食べて、畳の上で寝るというのは考えただけでも健康的ですね。若い方には日本の伝統文化を知る良い機会にもなるでしょう。
ストレスや慢性病へのゆっくりとした療養効果がますます求められる中で、心と身体の健康のためにぜひ有効に温泉を活用していただきたいものです。 |
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